~コールドスリープ・ファンタジー~
第1話:ドリームカプセル・カフェ
2150年、東京の青山に「ドリームカプセル・カフェ」という不思議なお店がありました。
「いらっしゃいませ!今日はどちらの時代にお出かけですか?」
店員のユナちゃんは、いつものように明るく声をかけます。このカフェでは、コーヒーを飲みながらコールドスリープのプランを選べるのです。
メニューには、こんなプランが並んでいます:
- 江戸時代体験コース(3ヶ月) – 桜満開の江戸で町人生活
- 恐竜時代アドベンチャー(1週間) – ティラノサウルスとのサファリ体験
- 2500年未来見学ツアー(6ヶ月) – 空飛ぶ都市と宇宙エレベーター見学
- 平安時代雅コース(1年) – 紫式部の時代で和歌と宮廷文化
「うーん、今回は何にしようかな…」
常連客の田中おじいちゃんは、既に47回も時間旅行をしている時間旅行マニア。今日も迷いに迷って、結局「明治時代の発明家になってみるコース」を選びました。
第2話:夢の中の夢
コールドスリープの技術が進歩して、今では眠っている間に「夢の内容をカスタマイズ」できるようになりました。
主人公のアキラは、恋人のサクラと一緒に「共有夢空間」で過ごすことにしました。二人が選んだのは「魔法使いの世界」。
「アキラ、見て!私、本当に空を飛べるのよ!」
夢の中でサクラは美しい翼を広げ、雲の間を舞います。アキラも竜に変身して、一緒に虹色の空を駆け回ります。
でも、ある日、夢の中で不思議な老人に出会いました。
「君たち、本当の世界に帰る時間だよ。夢に溺れすぎては、現実の美しさを忘れてしまう」
老人は微笑みながら言いました。
「でも現実より、ここの方が楽しいんです」とアキラ。
「そうかな?現実には、夢では味わえない『驚き』があるんだよ。予想もしない出会いや、思いもよらない発見が…」
二人は老人の言葉に心を動かされ、現実世界に戻ることを決めました。目覚めてみると、本当にたくさんの新しい発見が待っていたのです。
第3話:時間の庭師
未来の世界では、「時間の庭師」という不思議な職業が生まれていました。
庭師のおばあちゃんエミは、コールドスリープ施設で眠る人々の「時間」を育てる仕事をしています。
「この人は100年後に目覚める予定だから、その時代に合う花を植えておこうかしら」
エミおばあちゃんは、施設の庭で様々な植物を育てます。50年後に咲く桜、100年後に実をつけるりんごの木、200年後に香る薔薇…。
眠る人それぞれに合わせて、目覚めた時に一番美しい風景を見せてあげたいのです。
ある日、300年前から眠り続けている少女が目を覚ましました。
「わあ、こんなに美しいお花畑…これは夢?」
「いいえ、現実よ。あなたのために300年かけて育てたお花たちなの」
少女は涙を流して喜びました。時を超えた愛情が、こんなにも美しい奇跡を生んでいたのです。
第4話:記憶の図書館
コールドスリープが進化すると、眠っている間に「他の人の人生を体験」できるようになりました。
「記憶の図書館」では、過去に生きた人たちの記憶を保存し、眠る人に貸し出しています。
「今日は何の人生を体験されますか?」
司書のタクミくんが案内します。
「オーケストラの指揮者の記憶はいかがですか?ベートーベンの第九を指揮した時の感動を味わえます」
「それとも、宇宙飛行士はどうでしょう?初めて地球を宇宙から見た時の感激は格別ですよ」
小学生のユウちゃんは、「お花屋さんの記憶」を選びました。眠っている間に、70年間お花屋さんを営んだおばあちゃんの人生を体験したのです。
目覚めたユウちゃんの目は、キラキラと輝いていました。
「お花って、こんなにも人を幸せにできるのね!私も本当のお花屋さんになりたい!」
記憶を通して、新しい夢を見つけたのです。
第5話:愛の時間カプセル
最終話は、ちょっぴり涙の出る素敵なお話。
老夫婦のケンジおじいちゃんとハナおばあちゃん。二人は50年前、若い恋人同士でした。
でも、ハナは重い病気になり、治療法が見つかるまでコールドスリープにつくことになりました。
「必ず迎えに来るから、待っていて」
ケンジは約束し、50年間、毎日ハナのそばで待ち続けました。髪は白くなり、顔にはしわが刻まれましたが、愛は変わりませんでした。
そしてついに、ハナが目を覚ます日がやってきました。
「ケンジ…あなた、随分年をとったのね」
「ハナこそ、昔のまま美しいよ」
二人は笑い合いました。
「今度は二人一緒に眠りましょう。そして、同じ時に目覚めて、また新しい人生を始めるの」
真実の愛は、時間さえも超えていくのですね。
エピローグ:現実という名の奇跡
物語を読み終えた皆さん、いかがでしたか?
コールドスリープから生まれた空想の世界、楽しんでいただけたでしょうか。
でも、実は一番素晴らしいのは、今、この瞬間の現実かもしれません。
眠らずに過ごす毎日、季節の移り変わり、人との出会い、小さな発見…これらすべてが、実はとても贅沢な「時間旅行」なのかもしれませんね。
今日という日は、二度と戻ってこない特別な一日。
皆さんも、現実という名の美しい物語を、大切に紡いでいってくださいね。
〜おわり〜


